1.土地等の長期譲渡所得の特別控除制度の創設 経済の減速により土地取引の減少傾向にあることから、土地需要の喚起・土地の流動化と有効活用の推進を目的として、土地等の長期譲渡所得の特別控除制度がされました。 その概要は、個人・法人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内の土地等を譲渡した場合にはその譲渡した年中の譲渡所得につき1,000万円を特別控除できる、というものです。 ただし、その対象となる土地は所有期間が5年を超えるものに限られますので、特別控除が受けられるのは早くても平成26年1月1日以降ということになります。また、個人が住宅を売却した場合の3,000万円の特別控除との重複適用は認められません。 例えば、平成21年6月に5,000万円で土地購入し平成26年7月に6,000万円で売却した場合は、売却時の譲渡益が1,000万円となりその譲渡益から特別控除1,000万円を控除することができますので、その譲渡に係る税額は0となります。譲渡益が1,000万円を超えた場合には、その超えた部分の譲渡益に対して課税されることになります。 前述のとおり、適用を受けられるのは早くても5年後となりますが、平成22年末までに土地の取得をお考えであれば、この制度の創設も念頭に入れておくと良いでしょう。
2.土地等の先行取得をした場合の課税の特例の創設 この制度の概要は、法人・個人事業主が平成21年1月1日から平成22年12月31日までに土地等を取得し、その取得した日を含む事業年度終了の日後10年以内に他の土地等の譲渡をして譲渡益が発生しても、その先行して取得した土地等について、譲渡した他の土地等の譲渡益の8割相当額(平成22年1月1日から平成22年12月31日までの取得については6割相当額)を限度として圧縮記帳をすることができる、というものです。 この場合における圧縮記帳とは、譲渡した土地等に係る譲渡益のうち一定割合を先行して取得した土地等の取得価額から差引くというものです。土地等の取得価額から差引くということは、言い換えれば損失(土地圧縮損)を計上するということですので、例えば譲渡益の80%を土地圧縮損として計上した場合は、譲渡益のうち20%についてのみ課税されることになります。結果として譲渡した事業年度には譲渡益のうち20%に対する税金が課税され、譲渡益の80%に対する税金は課税されないことになりますが、この税金は免除されるわけではなく、先行して取得した土地等を将来譲渡したときに課税されます。つまり圧縮記帳により課税が繰り延べられることになるわけです。 例えば、平成21年6月に7,000万円で土地Aを購入し平成27年6月に別に保有していた土地Bを9,000万円(帳簿価額5,000万円)で売却した場合は、土地Bの売却時における譲渡益は4,000万円となりますが、この特例を適用することにより3,200万円(譲渡益4,000万円×80%)の土地圧縮損を計上(土地Aの帳簿価額は7,000万円−3,200万円=3,800万円となります)して、譲渡益4,000万円のうち800万円(譲渡益4,000万円−圧縮損3,200万円)についてのみ課税されることになります。 ただし、この特例の適用を受けるためには、土地等を取得した日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに特例の適用を受ける旨の届出書(平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例の適用に関する届出書)を納税地の所轄税務署に提出する必要がありますので、ご注意ください。 (作成 石川 成人)
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