貸倒引当金には二つの性格の違った引当方法があり、一つの引当金の名称で統合されていますので複雑の様相を呈しています。これは別々の引当金の計上と考えればよく理解できます。ただし、債権の範囲の中で金銭で支払うことが確定した債権が債権の中から抽出されて、貸倒引当金の設定対象となります。ゴルフ会員権の基本通達もこれで理解できます。
_____________ │ 金 銭 債 権 │ _____________ │個 別 評 価 金 銭 債 権│ _____________ │売掛金、 │
│貸付金 │
│これらに │
│準ずる金銭債権 │
│一括評価金銭債権 │
│_________│
では、申告書に記入していきましょう。
@ 個別評価貸倒引当金について
別表十一⑴から記入する事項を説明しましょう。
法人税法施行令96条第1項1号から4号に該当する売掛金、貸付金、その他債権で回収できないと見込まれるものを個別に別表に記入していきます。
大分類は4項目ですがよく現れるのは3項目です。外国の公的債権はあまり見ないものです。(ここでお断りしますが、連結法人税を納付する企業のために貸倒引当金の規定も増えましたがここではそれらの規定は省略しています)
長期棚上げ債権
事実上回収不能債権
形式上回収不能債権
外国の回収不能公的債権
1番から25番まで債務者別に縦の列に記入します。
3番の個別評価の事由欄に政令96条第1項第 号と、債務者への債権を上記4項目のどれに該当して引当金を取るかを明記するため記入します。第何号に該当するかを間違えないようにしましょう。
6番の個別評価金銭債権の額 ここには売掛金、貸付金、受取手形、その債務者にかかる債権の合計額を記入する。
5番 当期繰入額には当期繰入れた金額を記入する。
当然前期繰り入れ金額より多いときも、少ないときも同額のときもある。
4番 同上の発生時期とあるのは、事由の発生時期でありますから、当期の年月日が書かれるとは限りません。前期と事由が変わらなければそのままです。
13番までは取立見込額をきめ細かに記入することになります。
したがって13番に記載される額はこれ以上回収できない金額が入ることになります。
繰入限度額は、14番と15番については100%の金額が入ることになります。当期繰入限度額と繰入額との差額は、18番の繰入限度超過額として別表に加算対象となります。
19番から25番の欄は貸倒実績率の計算となっていますので、次期以降の一括評価の貸倒引当金の計算に役立てるものであります。19番、22番、24番がこの計算に必要になるものであります。
A一括評価金銭債権の貸倒引当金について
個別評価の対象とならない金銭債権は一括評価金銭債権として法人全体として一括して貸倒実績率を乗じて貸倒引当金を計算します。
ここで注意しなくてはいけないことは。最初に述べましたが個別評価金銭債権では貸倒引当金の計算対象とするものが、一括評価金銭債権の方では、貸倒引当金の対象ならないことがあります。これは従来の貸倒引当金の考え方を引き継いだからであります。実務家はこの辺に気をつけないと間違える危険があります。
別表十一の一の二
この別表の下段 一括評価金銭債権の明細から記入を始めます。
21欄はそれぞれの科目の勘定の期末残高を書きます。24欄には個別評価で対象として使用した売掛債権等を記載します。ゴルフの会員権で変換請求権の額や、家賃の保証金で返還請求した債権は個別評価の計算には加えますが一括評価の引当金計算では加算しないでください。
26欄 期末一括評価金銭債権の額×貸倒実績率=6欄 繰り入れ限度額
8欄 繰り入れ限度超過額を別表に加算します。
貸倒実績率の計算には 分母 前3年以内事業年度末における一括評価金銭債権帳簿価格の合計額
分子 分母の各事業年度における貸倒損失の合計額 12
+各事業年度の個別評価分の引当金繰入額 × ―――――――――
−各事業年度の個別評価分の引当金戻入額 各事業年度の合計月数
個別評価分の引当金の繰入額及び戻入額は売掛金等の債権に対する引当金とすることに留意します。
中小法人の貸倒引当金については改正前まで適用されていた法定繰入率が認められています。法定繰入率を算定する基礎は実質的に債権と認められないものの額
を控除して算定しているので別表にこの欄があり使用する場合としない場合が出てきたのでしょう。
注意点 法定繰入率は数種の事業を行うとき、どの率を使うかを迷うことになりますが、法人が営む主たる事業に対するものが適用されます。事業の売上高、所得金額、使用人の人数等これらを総合的に勘案して事業を判定することになります。
中小法人は法定繰入率や貸倒実績率をどちらか有利な計算方式を使用してよいことになっています。毎期選択適用でよいことになっています。
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