Q1 私は法人の代表者をしているのですが、私が亡くなるとその法人の株式に多額の相続税が課税されるので息子が事業を承継する際に困るのではないかと心配しています。何かいい方法はないでしょうか?
A1 非上場会社の事業承継を税制面で支援する規定として「非上場株式等についての相続税の納税猶予」の規定が存在します。この規定は、税金の納付を猶予するという方法により事業承継に関する税負担を軽減する内容となっています。
Q2 非上場株式の相続税の納税猶予というのはどういう制度ですか?
A2 納税猶予というのは納税を待ってもらえる制度で、非上場株式等についての相続税の納税猶予では株式に関する一定部分の税金の納付を待ってもらえます。納付を待ってもらった税額については事業承継をしっかり行って株式を所有し続ければ税金を納めなくていいのですが、事業承継が行われなかったり、株式を手放してしまったりすると税金を納めなくていけないことになります。
Q3 納税を猶予してもらえる税額はどのくらいですか?
A3 まず、適用を受けることができる株式数は、原則としてその会社の発行済株式数の3分の2が上限となります。ただし、後継者の方が相続前から所有している株式がある場合にはその株式数をマイナスしなければいけません。したがってこの株数と相続で取得した株数の少ない方の株数に適用があることとなります。 また、適用を受けることができる税額は、原則として上で説明した株数の時価の80%に対応する部分の税額になります。したがって、取得した株式について時価の2割部分についてのみ期限内に納付することとなります。
Q4 非上場株式等についての相続税の納税猶予の適用を受けるための要件はどのようなものがありますか?
A4 A3で説明したとおりとても優遇される規定であるため要件は多数設けられていますので、主なものをご紹介します。 会社の要件…上場会社でないこと、中小企業者であること、資産管理会社でないこと 先代経営者(被相続人)の要件…会社の代表権を有していたこと、本人と親族でその会社の議決権を50%超保有していたこと、親族内の後継者以外の中で最も多く議決権を所有していたこと 後継者の要件…相続開始後5月以内に会社の代表権を有していること、本人と親族でその会社の議決権を50%超保有していること、親族内で最も多く議決権を所有していること
Q5 納税を猶予されている間に気を付けなければならないことはありますか?
A5 相続税の申告期限から5年間は経営承継期間と呼ばれ、その間はA4に挙げた要件は満たし続ける必要があります。また、その期間内における雇用人数の平均は相続時の8割を下回ってはいけないこととなります。経営承継期間が過ぎた後は、基本的に株式を所有し続ければ猶予が続きます。 さらに、猶予されている間はこの規定の適用を受ける旨や会社の経営に関する事項などを記載した届出書を定期的に提出する必要があります。この届出書は経営承継期間内は毎年、経営承継期間を過ぎた後は3年ごとに提出する必要があります。
Q6 猶予されていた税額は最終的にどうなるのですか?
A6 納税猶予されていた税額は、A5に挙げた要件を満たした上で原則として後継者が亡くなるまで株式を所有し続ければ免除されることとなり納付する必要はなくなります。しかし、それまでの間にA5に挙げた要件を満たさなくなったり、株式を手放してしまったりした場合には猶予されていた税額は納付しなければならなくなります。また、この場合には利子税と呼ばれる利息を意味する税金も納めなくてはいけなくなりますので注意が必要です。 事業承継に関する相続税問題でお悩みの方にとってはとても有効な規定となっていますので、事業承継に関してのご相談はぜひ当事務所へご連絡ください。
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