Q6 相続時精算課税について・その2 |
2014/11/11(Tue) |
Q5 相続時精算課税制度全体の流れはどうなっていますか?
A5 贈与でもらった財産に関する税金を、将来贈与者が亡くなった時の相続税において精算するという制度です。贈与によって財産をもらったときには他の贈与とは切り離して贈与税が計算されます。その際納めた贈与税は、相続税の前払いとしての性格を持っているため、贈与者が亡くなった時の相続税額からマイナスしてもらえ、マイナスしきれない部分は還付を受けることになります。 通常の贈与税と異なり、贈与によって財産をもらったときに最大2,500万円まで税金がかからないことから、多額の贈与をしたい場合には有効な手段となります。
Q6 相続時精算課税制度を使うと有利なのですか?
A6 相続時精算課税は贈与でもらった財産を将来の相続税で課税するという制度で、財産の価値が変わらないのであれば贈与をしてもしなくても将来の相続税額は変わらないようにという考え方で作られています。ただ、財産の価値は、増えたり減ったりするものも多く、財産が生み出す利益なども考慮するとメリットやデメリットが発生する場合があります。
Q7 相続時精算課税についてのメリット、デメリットはどのようなものがありますか?
A7 相続時精算課税を選択した場合に、贈与でもらった財産について将来の相続税で課税される金額は贈与でもらった時の時価となります。したがって、基本的には財産の価値が上がるのであればメリットとなり、財産の価値が下がるのであればデメリットとなります。 たとえば、建物などは一般的に時間の経過により価値が下がりますが、成長が見込まれる会社の株式などは価値が上がる可能性があります。 ただ、建物であってもその財産の生み出す利益などを考慮すると必ずしもデメリットばかりとは言えない場合があります。賃貸物件である建物などを贈与した場合、元の持ち主の財産となるはずだった月々の家賃収入は贈与を受けた人の財産となりますので長期的に見ればメリットとなることもあります。 また、基本的に価値の変わらない財産である現金であっても、贈与を受ける人がローンなどの返済を抱えている場合には、贈与を受けた現金でローンの返済に充てることで本来発生するはずだった金利負担を減らすことができるためメリットが出てきます。 逆に、価値が上がるかもしれない財産である土地については、居住用や事業用の土地について相続で移転した場合には評価額を80%減額してもらえる特例の適用があるのですが、生前に贈与で移転した土地についてはその特例の適用が受けられなくなってしまうというデメリットもあります。
Q8 相続時精算課税制度を使うかどうかは判断が難しそうですね。
A8 将来の相続税まで考慮に入れて判断しなければならないため非常に難しいです。現時点で将来の相続税が課税されない方も税制改正等により相続税の課税が行われる可能性もありますので、選択は慎重に判断することをお勧めします。贈与をした後では対策をとることが難しい場合もありますので、贈与をする前にぜひ当事務所へご相談ください。 |
Q5 相続時精算課税について・その1 |
2014/11/5(Wed) |
Q1 私は70歳になるのですが、息子にまとまった金額の財産を贈与したいと考えています。特に優遇措置の適用を受けられるような財産ではないのですが、贈与したときに何かいい方法はないですか?
A1 親から子への贈与については相続時精算課税という制度を選択することができます。この規定は、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与が行われた場合に、通常の贈与とは異なり、2,500万円の特別控除の範囲内であれば贈与税がかからないようになる制度となります。なお、65歳以上や20歳以上といった年齢の要件は、その年1月1日現在で判定しますので、原則として前年に65歳や20歳に達している方が対象となります。
Q2 相続時精算課税を選択すると税金の計算はどのようになりますか?
A2 贈与税については相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については、ほかの方からの贈与とは区別して税額を計算します。その際の贈与税額は、上限2,500万円の特別控除額を控除し、特別控除額を超える部分について20%の税率で計算されます。通常の贈与に対して適用される基礎控除額(110万円)や税率などは適用されません。なお、2,500万円の特別控除額は、その贈与者からの贈与についてトータルで設けられているものであり、複数年にわたって使うことができますが、使い切ってしまうとなくなってしまいます。さらに相続時精算課税という名前のとおり、贈与によってもらった財産は贈与した人が亡くなった際の相続税において課税されることになります。その相続税の計算において、贈与によって財産をもらった際に納めた贈与税がある場合にはその贈与税を相続税からマイナスしてもらえます。
Q3 相続時精算課税を選択するのに注意しなければいけない点はありますか?
A3 相続時精算課税を選択するとその贈与者からの贈与についてはずっと相続時精算課税の規定が適用され通常の贈与税の制度に戻ることはできません。また、贈与者が亡くなった際の相続税の計算で用いられる金額は、贈与によって財産をもらった時点での金額が使われるため、価値が下がるような財産、たとえば建物などを贈与した場合には、贈与者が亡くなった時には財産の価値がかなり下がっていたとしても贈与した時点での価値で相続税が課税されることとなります。 上記のようなことからこの制度はメリットばかりとは言えない制度ですから、選択に当たっては注意が必要となります。選択をお考えの場合にはぜひ当事務所にご相談ください。 なお、この規定の適用を受けるためには、最初の贈与において税務署へ届出書を提出する必要があり、その後の贈与についても将来の相続税において精算する関係上、贈与税が発生するか否かにかかわらず贈与税の申告手続きが必要となります。
Q4 孫にも贈与してあげたいのですが?
A4 現在の法令で相続時精算課税は、親から子への贈与を基本としつつ、子が亡くなっている場合には孫に対する贈与についても選択できます。したがって、子が生きている場合には孫に対する贈与については相続時精算課税を選択できないのですが、平成27年1月1日からは子が生きている場合であっても孫に対する贈与について相続時精算課税を選択できるようになります。また、現在65歳以上とされている贈与者の年齢の要件も60歳以上と変更されることとなっています。
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Q4 住宅取得等資金の非課税について |
2014/10/28(Tue) |
Q1 私は70歳になるのですが、このたび息子が家を新築することになり、その頭金を贈与してあげようと考えているのですが、何かいい方法はありますか?
A1 住宅購入のための金銭の贈与については住宅取得等資金の非課税という規定があります。この規定は、直系尊属(贈与を受ける人の父母、祖父母、曽祖父母等)からの贈与によって住宅用家屋の新築等をするための金銭を取得した場合に、贈与された金銭のうち一定の限度額について贈与税を非課税とする規定です。
Q2 住宅用家屋の新築等にはどのようなものが含まれますか?
A2 住宅用家屋の新築等には、家屋の新築以外に、いわゆる建売住宅の取得や中古住宅の取得、家屋の増改築も含まれます。また、土地については原則として家屋の新築、取得、増改築とともに行われる取得についてのみ含まれることになります。
Q3 非課税になる一定の限度額とはいくらですか?
A3 住宅取得等資金の非課税の非課税限度額は贈与を受けた年によって違っており、平成26年に行われた贈与については、建てる家が省エネ性や耐震性の要件を満たす家屋の場合1,000万円、一般の家屋の場合500万円となっています。
Q4 非課税の適用を受けるのにあたって必要となる要件などはありますか?
A4 主な要件として、贈与を受ける方が贈与を受ける年の1月1日において20歳以上であることや新築等する家屋の床面積が50u以上240u以下であることなどがあげられます。また、原則として、贈与を受けた金銭で翌年3月15日までに住宅用家屋の新築等を完了し、その家屋に住んでいることも必要とされます(住宅用家屋の新築等が完了していれば住むのは3月15日を少し過ぎても大丈夫です)。 なお、この規定の適用を受けることにより贈与税が発生しない場合でも贈与税の申告手続きが必要となります(申告手続きは贈与があった年の翌年2月1日から3月15日の間に行います。)。 規定を受けるための要件ではありませんが、贈与日、贈与の事実を明らかにしておくためには贈与契約書の作成や預金通帳などに金銭の移動の事実を記載するなどしておくとよいでしょう。
Q5 この規定は、この先いつでも使えますか?
A5 この規定は、現在(平成26年10月)では、平成26年12月31日までに行われた贈与についての規定とされています。ただし、平成27年度税制改正における要望事項の中にその期限を延長し、非課税の限度額を引き上げるような内容が盛り込まれていますので、期限が延長される可能性は十分に考えられます。現時点では確定的なことは申し上げられませんが、今後の税制改正の動向が注目されます。 |
Q3 教育資金の一括贈与の非課税について |
2014/10/21(Tue) |
Q1 私は70歳になるのですが、このたび孫が私立中学に進学することになり、その学費を出してあげようと思うのですが贈与税はかかりますか?
A1 親子や祖父母と孫または兄弟間などはお互いが扶養義務者となり、助け合っていく義務があります。そういった扶養義務者間において生活費や教育費を贈与した場合には贈与税は非課税となりますので贈与税はかかりません。
Q2 では、将来必要になる高校、大学の学費も今のうちに贈与しておいていいのですか?
A2 A1でお話しした教育費を贈与した場合の非課税は、現在必要で、すぐに使うものを贈与した場合の規定となっています。将来必要になる教育資金を一括して贈与しておくためには「教育資金の一括贈与の非課税」という規定があります。
Q3 教育資金の一括贈与の非課税とはどのような規定ですか?
A3 親子や祖父母と孫の間で将来の教育資金について前もって一括で贈与等した場合に贈与税を1,500万円まで非課税とするという規定です。信託銀行などの金融機関に専用の口座を設けることにより教育資金はその口座で管理されますので、教育費の支払のつど領収書を金融機関に提出し、口座よりお金を引き出します。
Q4 教育資金とはどのようなものですか?
A4 いわゆる学校に対して支払われる授業料等はもちろんのこと、学校以外の塾や習い事(そろばん、ピアノ、絵、水泳、野球など)も対象となります。ただし、学校以外の塾や習い事については1,500万円の上限金額のうち500万円しかこの規定の対象となりません。
Q5 教育資金の一括贈与の非課税について何か注意する点はありますか?
A5 教育資金の一括贈与の非課税の規定は、原則として、もらった方が30歳になる日において終了することとなります。その際、教育費として使わなかった残額があるとその金額には贈与税の課税が行われることになります。すぐに支払う教育費についてはA1でお話しした規定が使えますし、贈与税の基礎控除(110万円)もありますので、この規定は祖父母の方が自分の亡くなった後の孫の教育資金を前もって贈与しておき、孫の将来を支援すると同時に相続財産を減らしたいという場合に有効な手段となっています。A1の非課税、基礎控除額との兼ね合いを考えながら利用するといいでしょう。
Q6 さっそく信託銀行に行って手続きをしようと思いますが、この規定の施行はいつからですか?
A6 すでに平成25年4月1日から施行されています。現時点での法令では、平成27年12月31日までが期限となっていますので、その日までに手続きを済ませる必要があります。
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Q2 贈与税の配偶者控除(2,000万円)について |
2014/10/17(Fri) |
Q1 私は今年70歳になり長年連れ添った妻と二人で暮らしています。居宅などの財産の名義は私のものとなっているのですが相続税対策として何かいい方法はありますか?
A1 居住用不動産(住むために使われる家や土地)や居住用不動産を買うための金銭については贈与税の配偶者控除という規定が設けられています。 この規定は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産やそれを買うための金銭の贈与が行われた場合には、2,000万円までは贈与税を課税しないというものです。贈与税の基礎控除額は110万円ですので2,000万円まで贈与税がかからないこの規定はとても大きな優遇規定ということが言えます。ただし、この規定は原則として1度しか適用を受けることができません。
Q2 贈与税の配偶者控除を受ける際に気を付けなければいけないことはありますか?
A2 贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上である夫婦間における贈与が対象となっているため、贈与日時点で結婚してから20年以上経過していることが必要です。 次に、贈与を受けた日の翌年3月15日までにその居住用不動産に住んでいなければいけません。特に、金銭の贈与を受けて居住用不動産を新築するような場合にはこの期限に気を付けてください。 また、この規定を受けるためには贈与税の申告手続きが必要となります。たとえ税金がかからない場合でも手続きが必要となり、その際、贈与した財産が居住用不動産であれば、その財産の評価(金額的な価値を算定すること)をする必要がありますので当事務所へご相談ください。
Q3 では、税金は全くかからずに財産を移転できるのですね?
A3 2,000万円に贈与税の基礎控除額を合わせた2,110万円までは贈与税がかからずに財産を移転することができますが、居住用不動産の贈与の場合には登記費用や不動産取得税などは発生しますので準備が必要です。ただ、それらを考慮しても将来の相続財産を大きく減らすことができるため、相続税対策としてはとても有効な方法となります。
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