フロンの代りに純水を使用−PIDエンジが水冷媒のエアコン開発

 
 P・I・Dエンジニアリング(社長=阪田行宣氏、本社=大阪府東大阪市吉田本町)はこのたび、フロンの代わりに純水を冷媒としたエアコンを開発した。

 エアコンに使用する冷媒はフロンに限らずアンモニア、窒素、酸素、ブタン、プロパン、アルコールなどおよそ液体と気体の両方の状態になるものなら何でも使用することができる。純水もこれに値するが、加水分解や錆などの問題から冷媒としては敬遠されてきた。だが純水の蒸発潜熱はフロンの十倍、アンモニアの二倍と非常に高く、マイナス一〇度C程度まで凍らず、電気も通さない。真空中であれば錆も発生しない。なかでも純水を冷媒として使用する際の一番の優位性はコスト面で発揮される。フロンやアンモニアのように高圧縮を必要としないので、電気代が三分の一から五分の一程度までに抑えることができる。

 純水は、蒸発して気体になったときに体積が負圧下では膨大になり、従来のピストン式圧縮機では押しのけ量が少なく、たとえ水蒸気を圧縮排出できても多大な動力を必要とし、機械的構造にも技術面で困難(回転数を上げられない、機械強度等)である。

 今回開発したエアコンは、心臓部であるコンプレッサー(圧縮機)に、ピストン式ではなく、遠心式の羽根(ファン)を採用している。この羽根は、内周から外周へ翼間ピッチが狭くなっていることが特徴。例えるならば、水撒きをする時にホースの先端を指で摘むと断面積が小さくなり圧力が高くなって遠くへ水を飛ばすことができる原理だ。従来の翼形では、軸方向の面積は圧縮できても円周方向は翼形が扇形になり、乱流・逆流が発生していたが、新開発の遠心式インペラでは乱流・逆流が発生せず、低速回転で高圧縮ができる効率の高い圧送を可能にした。
 この設計方式によるインペラ形状により、現在各種分野で使用されている遠心式インペラの効率向上を図ることができ、エアコンに限らず、水用ポンプ、送風機、車両用ターボ、ジェットエンジン圧縮機、船舶用圧縮機、産業用ガス液化装置、冷却ファン、発電機などあらゆる産業分野に応用が可能で、今後さらに用途拡大が期待されている。

 阪田行宣社長は「約十年前に、水は冷媒として使えないのか、という疑問を感じたことが研究の始まり。水は太陽の熱で蒸発し、冷やされ凝縮された後に雨となって帰ってくる。この自然のサイクルによって地球の温度環境を制御している。エアコンで使う場合でも同様で、一番我々人間の環境に適した冷媒。当初はエアコンとして研究開発を進めていたが、今では用途の一つであって、今後は実用化に向けて幅広く用途開拓を進めていきたい」と大きな期待を寄せる。

 同社は平成二年に設立し、工業用温調水制御装置の製造・販売を展開してきたが、平成九年にはフロンの代わりに水を冷媒とした水冷凍機の研究開発を本格的にスタートさせるため、会社の業務形態を研究開発型企業に特化。これまでの経験や、研究で試行錯誤を重ねた結果が今、実を結ぼうとしている。

PIDエンジニアリング(電話0729−66−6119)



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